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  保険価額評価の重要性
 昨今、住宅物件においては新価保険が普通となり、一般物件の時価保険についても新価特約が販売され、比例てん補が語られなくなりつつある。しかしながら、現場の人間として、僭越ながら言わせて頂くと、保険料という予算の都合から、時価保険での一部保険の現場は存在する。
 今から24年程前、火災の事故受付を手に、保険会社の査定担当者A氏と現場へと赴いた。
 現場では既に修理業者が復旧の為に解体、撤去作業を行なっており、修理見積りも作成が終わっていた。
 罹災状況は損率10%程度の小損害であったが、修理見積書は驚くほど高いもので、損率30%になる金額であった。
 A氏がベテラン(査定歴20年位)だった事も考慮して頂ければ、我々2人が顔を合わせて「高い。」と言ってしまったのも過言ではありませんでした。
 被保険者と修理業者とA氏と私の4人で、さっそく話を始め、鑑定人の立場として、私は修理における範囲(u数,工数)及び単価を指摘し、訂正を求めた。
 しかしながら、修理業者は範囲は縮小したものの、単価を譲らず、必然的に全額は高価なままで私の想定する損害額に近づかず、話は難航し、A氏が「とりあえず、本日は帰って検討します。」で帰路に着いた。
 丁度昼食の時間も重なり、福岡市の天神のファミリーレストランでA氏と食事をしている時、箸を置きこう話した。
 「今回、この業者提示金額を認めましょう。そのかわり、全部保険だった大前提を破棄しましょう。損害額が上がれば保険価額も上がる。この理屈でいけば、一部保険となり、あなたの思った損害額認定ベースでの支払保険金とほぼ同等支払いとなります。火災保険における保険価格算定の意義はここにあります。」
 A氏はニコッと笑って箸を取った。
 私は当時、積算して損害額を出す事に固執していたせいか、非常に感銘を受けた。
 そのA氏も15年程前定年退職されたが、私は今も、その人の話を現在の実務の中で、時々思い出しながら鑑定をしている。
※時代の流れか、その時食事したレストランの前を通ったら、道路拡張に伴ったものか、不景気のせいなのか、その店舗は跡形も無く、駐車場に代わっていた。 A氏との会話、思い出も、いまや邯鄲の夢である。


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