芸子の三味線は家財 『ストリート鑑定人』の戯言
保険価額評価の手引き(1993年8月)という廃版になった書籍があった。 1冊だけ持っているが、今でも非常に役に立つ。
その中に学者の書籍とか芸子の三味線,衣類等は営業用什器備品としての色彩が強いが通常は家財と考えるのが一般的で家財として処理される…と記載がある。
令和の時代では一般例で芸子の三味線では無くアーティストのギターと記載すべきと思うが32年の時代の流れである。
ストリートミュージシャンでいつかはメジャーになりたいと頑張ってる若者、 普段はアルバイトで生活し夜は長崎市のアーケードの閉店した店舗のシャッター前で ギターを弾きながら歌っている。
ギターケースに千円入れて10分程音楽を聴かせてもらう。 ギターも歌も上手いし『頑張れ!』と言いたい。 シンディーローパーも売れる前は街角で歌っていたらしい。
ミュージシャンのその手にあるギターを自宅に保管する際、そのギターは家財である。 家財に付保していれば、火災の際に対象になる。 もちろん、建屋内にある場合に限る。 保険料の問題である。
アーケードで損傷するリスクをカバーする為には動産総合保険でギターに付保する方法はあるが、リスクが高過ぎて保険会社が引き受けしないであろう。 同保険を過去に自動販売機に付保している契約者がいたが、事故が多すぎてアンダラとなり引受禁止となった。 家財の定義や目的の範囲等議論されなくなった近年、あの頃真面目に 考えていた内容は半ばどうでもいいのかなと思える。
愛車の車両パーツを自宅にストックしている場合、それは家財なのか?
自動車部品として目的外であり、125cc以下の原動機付自転車 のパーツであれば家財なのか等…
昭和の時代査定パーソンとよく議論していたが、今は『ケースバイケース』という素敵な言葉で妥協へと突き進む場合が多い。 現場立会するとその場での質問に答えないといけない場合が多いにも かかわらず、その権限は保険会社にしかないから、持ち帰りまして 後日保険会社から回答となります。…と言うしかない。
明らかに支払対象外の場合はその場で約款を説明するが 微妙なケースは保留にしないと鑑定人が保険会社から叱責を受ける可能性を否定できない。
売れないミュージシャンならぬ『ストリート鑑定人』の戯言である。
令和7年5月3日 休日出勤にて
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