アパート保険金詐取事件 その3
英雄にはもう金が無かった。 唯一の財産は廃墟と化したアパートである。
現金化する為にはまず、火災保険加入と学習した。
前回のA保険会社では失敗したから、今度はまたインターネットでB保険会社に 加入した。 保険料の月々の支払いがキツイ。 再度、他社に保険に加入して2ヶ月は頑張ったがもう限界となり、 とある作戦を思いつく。 風災だと経年劣化や老朽化がばれる。 そう、燃やせば誰もわからない。 英雄は8月15日の精霊流しで街中が爆竹で大騒ぎの日を狙った。
その日は賃借人も繁華街に精霊流しを見に行く。
夜中の9時、アパートに電気の灯が無いことを確認(出掛けて無人である)し、空き部屋を鍵で開けて、ガ○○ンを撒いた。 繁華街の精霊流しの爆竹や花火で街中が喧騒の中、放火した。
ガ○○ンは引火性や揮発性,発火性どれをとっても万能な助燃剤である。 爆発的に燃焼し、英雄は恐怖のあまりガ○○ンタンクをその場において 現場を離れた。
アリバイ工作の為、そこから大至急、隣町の諫早市に電車で向かい、ホテルに宿泊した。 近所の119番通報から、火災現場は優秀なる長崎市消防局が迅速な消火活動で鎮火した。 英雄の目論見と異なり、当該建物は全焼に至らず、1階1室から2階に延焼し小屋組,屋根まで延焼したが、いわゆる半焼で鎮火した。 当日から警察消防が諫早市のホテルに宿泊していた英雄に連絡をとり、 翌日、現場検証に大家である英雄が呼ばれ、警察から事情聴取された が諫早市のホテルに宿泊していた事や自分は全く知らなかった事を 証明した。
その後、英雄はB保険会社に事故報告した。 B社は直ちに動いた。
月々の支払いを2回しかしていない新規契約で火災が発生したのである。
当然B保険会社も鑑定人とリサーチ会社を入れて調査する。
そう、ここは九州の長崎、調査の鑑定人とリサーチ会社がまた同じ人物となった。 鑑定人もリサーチ会社も保険会社からの委嘱によって動く別会社であり、
鑑定人は取引先の保険会社は12社であったから、確率的にそうなる。
リサーチ会社が鑑定人に曰く。 『この火災は もう何も言わずに保険金不正請求というの疑義がありますよね。』 鑑定人曰く『△△さん、1年ぶりですよね。1階でガ○○ンタンク発見しましたよ。 しかも10ℓ缶。真夏にこれを階段200段登って持参して火をつける人物は おそらくアイツしかいませんよね。まあ、推測ですが…』
鑑定人は損害調査であるから、原因調査は物理的なタンクの形状とその容量と液体の種類を調査しメモしてカメラに収めて建物全体の図面を作成して 保険会社に速報を送付した。
…続く 令和7年10月3日
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