アパート保険金詐取事件 その4
この物語はフィクションである。
英雄と保険会社は全損か分損(半焼)で揉めていた。 ただ、論点はそこでは無い。
モラルリスクかどうか所謂『保険契約者の故意または重過失』なのであるが、 ここはどうしても尻尾をつかめなかった。
放火は間違いないが英雄にはその場に居なかったというアリバイもあり、
保険会社は純粋に損害額についての議論と同時並行してモラル調査を 行っていた。
個人情報と企業情報と守秘義務の観点から鑑定人は保険会社に前も 他社事案でこの現場に来たとは言えず、客観的に話すしかなかった。
優秀なリサーチ会社がとある証言ととある事実を突き止めた。
2名の賃借人は火災当日、精霊流し見物には行かずそのアパートに 居たのである。
電気代滞納から電気が止められていて、夜中は真っ暗の中での生活を 1年以上過ごしていたのである。
無人と思われた事故時間にも2名は建物内部に居て、火災の中、 避難した。
現在は近所の公民館に仮住まいさせてもらっていたのである。
長崎市は市民の味方であり、素晴らしい。 そして知らない人物が105号室の鍵を開けて放火したと警察に証言して いたのである。
火災保険では放火された場合でも問題無く保険金が支払われるが 自放火は駄目である事は周知の事実である。
2名の老婆達は耳も遠く、不確かな証言として本件はそこまで社会問題 になっていなかった。
どこかの廃墟が燃えたくらいの話でしかなく、TVにも少し映った程度であった。 仮に英雄が放火犯と確定しても残念ながら犯罪ではない。
自分の財産に自分で火を着けても全く問題ない。
類焼も無く、近隣に迷惑も掛けてない。 ただし、これでまんまと保険金を受領した場合は保険金詐欺である。
その昔(これは実話)自宅の解体費用を捻出する為に放火した御仁が居て保険金を請求しやがった。 もちろん、優秀な保険会社はその事を掴み、保険金を支払わなかった。
不正請求だったからであるが、令和の時代はこれを『不払い』と言うのであろうか?
ついにB保険会社は損保全社に照会文書を提出して当該契約者に ついての情報提供を依頼した。
令和7年10月6日
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