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孤独死の現場そしてその割増賃金
家計分野では『破損・汚損』一般物件では『不測かつ突発的な事故』 で現場立会依頼がある。 前者は共同住宅としてアパートの1室の賃借人の孤独死,後者は 店舗併用住宅の住宅部分での孤独死が多い。
焼身自殺現場も経験したが、孤独死はまた別の事象として受け止める。
不慮の事故で例えば一人暮らしの室内で倒れ、頭の打ちどころが 悪くて苦しみながら、119番等の助けを呼べず、死に至る場合が 孤独死である。
皆様御存知の通り、発見が遅れた生身の人間の孤独死はそのまま腐敗するしかない。 人間が腐敗すると体中の水分が開口部である目,鼻,口,肛門から体液として腐った状態で流れ出て異臭が室内に漂う。 誰も発見できない為、エアコンの効いた状態で腐敗が進む場合がある。
その様な状況でどこからともなく虫が発生し、ご遺体を食害する。
そして電気代が滞納されて九州電力が電力供給を停止すると更に 食害が進行し、異臭が玄関ドアを通じて外部に漏れ出す。
部屋中に微生物や蠅,蛆虫が発生し、異臭があらゆる部屋の建具から漏出して近隣の賃借人からの苦情で大家(建物所有者)と警察にて発見される。
いつもそう。
そして保険会社からの依頼で弊社が単独立会する。
もちろん、ご遺体は撤去頂いているが、ご想像通り、マスクを2重にしても何の効果も無く、あまりの悪臭に部屋にずっと居られない。
窓を開けようとしたら、そこには何千匹もの蠅がいる。
何とかサッシュを開けると大家から異臭が近所に漏れるから開けるなと怒られる。
フロア合板の濡損の原因は腐敗した体液である。
カツラと思いきや、ずるっと取れた髪の毛である。
※ちなみに損害保険では臭気損害不担保である。
濡損した内装床,巾木,下地の根太,大曳の取替え工事が対象である。
2階で孤独死なさったその現場は1階の天井まで濡損を被り、その液体が 1階の内装内壁,床を濡損,汚損させていた。
そう、これが孤独死の体液漏洩の内装の濡損の形態である。
修理業者の割増賃金の請求の気持ちは重々理解するが、割増賃金は 修理付帯費用の範疇であると仕分けできない。
修理付帯費用保険金の約款には 割増賃金とは損害が生じた保険の目的を迅速に復旧するための工事に伴う残業勤務、深夜勤務または休日勤務に対する割増賃金の費用と記載がある。
孤独死現場の悪臭に因る作業困難の割増賃金は認定されない。
依って、孤独死の現場(首吊り遺体含む)の部屋の内装の復旧工事には 割増賃金は認定されない。 個人的には『割増賃金払ってやれよ』と思ってしまうが約款に記載が無い。 記載がない以上、修理付帯費用保険金で割増賃金を担保出来ない。
修理付帯費用保険金は 旧東海社で昭和63年に開発されたが孤独死までの具体例には対応できずに現在に至っている。
まあ、レアケースとして約款改定にはならないと考える。
令和7年12月4日
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