鑑定人をやっていればいつかは出会う超過保険の全焼事故。
以前述べた保険価額の被保険利益を鑑みれば、被保険利益の効用である1.超過保険の防止,2.保険会社の責任範囲の確定,3.同一保険の目的について数個の保険契約の成立という3点で、超過保険の存在は回避する事ができない問題である。
商法第631条 保険金額カ保険契約ノ目的ノ価額ニ超過シタルトキハ其超過シタル部分ニ付テハ保険契約ハ無効トス
商法の規定通り、保険金額が保険価額を超えて付保されている場合、その差額は無効となる。この点だけに集中して被保険者に説明することは危険である。契約の経緯や更改契約前の保険金額はいくらなのか等を考慮して案内しなければならない。更改契約時に保険契約を修正して保険金額の増額をしている場合もある。超過部分の保険料を返還すればいいと言うわけではない。経験上、被保険者に誤解や不信感を招き、険悪な雰囲気の中で、話し合いし、決裂のもと帰路に着くことになる。
全損に至った保険の目的が保険金額全額を支払う事ができない超過保険の契約はそれこそ被保険者への丁寧で慎重な説明が必要である。
どんなに適正に評価して、付保していても、保険期間内(特に長期火災保険契約)での 罹災時の保険価額(この場合、時価額について述べる)は評価時から、年数が経過するとブレが発生し、結果的に超過保険となる事は物価の変動や経済状勢により、あり得る事である。逆に一部保険に変身することもある。だから、各保険会社や保険代理店が被保険者に逐一提案し保険契約の短期での見直しを勧めている場合が多い。
元来、不当利得の禁止から、超過部分の保険金額は無効であるし、未評価保険であるから、決して問題ではないのであるが、保険料を負担している保険契約者にとってみれば、契約金額である保険金額が全額支払いできないのであるから、納得しにくい部分である。
商品等の在庫変動の著しい保険の目的等はまさに超過保険が発生しやすいが、それを避ける為に「通知保険」も存在するし、他方で「評価済保険」や「協定保険価額」の契約も有り、一概に一つの場合ではなく議論しなければならないと考える。
保険価額評価の重要性については小生も含め、損害保険業界で皆様が真剣に議論している事であるが、約款上、実際に事故が発生してから評価するため(「損害が発生したその地、その時の価額」)、被保険者に対してはより慎重な態度で接するべきである。
現場に赴く鑑定人は、物は見るが、人は見ないというわけにはいかない。ましてや、全損時に保険金額をショートしての支払等は法律論だけではよくないと思われる。被災者の罹災にあった心境もよく把握した上で、誠意を持って説明すべきである。昨今言われなくなったCSの考え方が廃止されたわけではないのである。
平成20年10月14日
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