賠償責任保険でも火災保険でも、保険の目的に物理的な破損や毀損があって、機能的には支障は無いが、外観が損われた損害において記述する。(ここでは車両の格落ち損害や評価損は専門の技術アジャスターの方々の範疇であり、車両を除いての話である。)
例えば、保険事故が発生し、家財であるスーツが汚水により濡損してしまい、全損ではないが、美観的な格が落ちてしまった時等の例について勘案する。
1.クリーニングしてもわずかなシミが残った。 2.客観的に見て、そこまで、気にしなくてもいいと思うくらいのシミである。 3.スーツとしての機能的な要素に支障はない。 4.破れ、ホツレは免れている。 5.全損では無い。
以上、1~5に依り、下記算定式にて損害額を計算してみると
再調達価額 \420,000(消費税5%込み,注文品 生地 イタリア製) 最終残価率 10% 実務耐用年数9年 経年減価率 10%(=(100%-10%)/9年) 減価控除率 30% (10[%/年]×3年使用) 時価額 \294,000(= 420,000×(100%-30%)) 損害額 \ 29,400(= 294,000×格落ち損10%)
本件は手直しによる復旧ができないものの、シミが僅少で近くまで来て良く見ないと発見できない場合の損害の考え方の一例である。
この認定が正しいのかどうかは抜きにして、スーツのシミは前ポケットの下部であり、目立たないし、機能的に問題は無く、高価な上質のスーツが全損に至ったわけではない。よって、時価額の10%程度の損害として考えた。類似の事案で腕時計の金属バンドに擦損が発生している保険事故(本件は賠償責任保険)で、バンドに1m/mの傷が確認できた様な案件も同様に算定するのもまた格落ち損の考え方である。他方で、一度時価額で全損認定し、残存価額を差し引くとの考え方もあるが、それはまたの機会に・・・・
蛇足ながら、その昔(昭和63年頃)、家財の価額協定特約(新価)ができ、販売された時、 「古い背広も捨てずにとっとく」と言われた記憶がある。どんなに注意して、大切にして、クリーニングして、体形が変わったら、手直しをしても背広は消耗品でいつかは捨てられる。つまりは高価な背広も消耗品に他ならない。そんな家財である背広も捨てずにとっておけば、いざ火災で焼失しても、保険金支払いの対象になるよという意味だったと解している。大学を卒業して、社会に出た時、恥ずかしながら手取り10万円であった。背広は高価で大切にしていたが、今思えば、その時の背広は破棄してしまい、存在しない。価値観の相違を恐れずに書けば、どんなに高価な背広でも継続使用財である以上、消耗品であり、前述の査定方法が正しいと考える。
平成20年10月15日
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