SEA GLASS 平成21年9月15日
少年にはたった一つの硝子の塊が そこに存在するまでの長い長い日々を感じられた。どこかで捨てられた緑色の空き瓶が今は一つの宝物として、また地上に戻ってきた、青い海、深い海、そして激しい荒波 その中で、削られ丸くなり、形が小さくなり、手の平サイズとなり、また人間のもとへ帰る。 緑色のグラスを覗くとそこには新しい世界があった。割れた硝子のとげとげしさは無くなり、丸く丸く少年がケガをしない様に、あたかも人間に配慮してここにある。いったいどんな世界を見て来たのだろうか。 何も語らない硝子の丸いかけらが無言で訴える。少年はシーグラスを光にかざす。人間の創造物が自然の力できれいになる。人工的な物体が自然に還る。
それは我々鑑定人そのものである。 鑑定人になりたての頃、それは割れた空瓶である。 空瓶は危険でとげとげしい。 約款と現場の違いの荒波に翻弄され、現実となり激しい荒波に削られ そしてだんだん小さくなっていく。 そこで答えを求めても鋭い輝きは鈍い光と変化し、ただの砕石(コンクリートにおける水+セメント+砂+骨材の中の骨材)同様の副資材と化す。 しかし、激しい波が曇った砕石を磨き上げる。 まるで曇り硝子が型板硝子となるかの様に…… そして磨き硝子として化した時、硝子は脆く割れてしまう。やはり硝子は網入り硝子。ワイヤー入り(例PW6.8)には勝つ事ができない。 シーグラスはこの業界に関係無い一人の人間が鑑定業界にのめり込む、あたかもそんな物体かもしれない。そしてシーグラスはこれ以上割れない。 更に自然の創造物ではない。鑑定人も資格という人為的な製造物である。 しかしいつかは海の一つの景色となり、ある人には宝石に映る…… そんなシーグラスになる日が来るのであろうか?
後記…小生が入手したシーグラスはとある酒造メーカーの一升瓶の欠片と推定される。こんなことは冷静に調べるとすぐわかる。 物事は現実を沈着冷静に見るとすこぶるつまらない事かもしれない。 鑑定業界ではシーグラスは残存物取片付費用中の廃材の一つに過ぎないことかもしれません。
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