企業物件を調査に行くと時々気付く。事故の担当者なる人物が自分の会社としてのその規模の大きさにより、その人物が奉られ、関係者一同が敬語のみならず、言葉を選んで話し、またその対応もあたかも国賓であるかの様に接し、およそ人間皆平等なる理論は存在しない。被災者という状況を察し、その大変さを鑑み、対応している小生の鑑定人という立場が地に落ちる。一般に自動車保険の対物の賠償責任保険での事故現場に赴くと、あたかも小生が車をぶつけたかの様に文句を言われるのも、別に日常茶飯事であり、適性な損害額算定の為には辛抱しないといけない。この仕事の同業者の諸子も同じ目に合っているはずだから、お叱りを受けるのもこれも仕事である。小生は会社員としてこの仕事を約10年して、自分で独立開業した際、あらゆる人々の手のひらを返す言動は身を持って体験した。自分の努力研鑽した実績がそれは会社の評価であって、開業して経営者になると、開業した世の社長の苦労話の通り、厳しい現実が待っていた。小生が会社員であった頃、取引先は小生に敬語を使っていたが、独立開業したと同時に、蔑んだ言葉使いとなり、いわゆる『ため口』に変化した人達も存在した。およそ企業戦士と思われる様な紳士的な態度は吹き飛び、本性はああこんな人だったのかと少し哀れに思った。それから14年経過すると反面教師と考え、いい勉強になったと考えられる様になり、大人になった。 あまりに失礼な暴言を吐く企業戦士に向かい、先輩鑑定人の言ったことがある。『私はあなたの会社に頭を下げたが、あなたには頭を下げてはいない。今度会う時は背広のバッヂ(社章)を外して来い』その表現が正しいか間違いかは抜きにして、多分、失礼なその御人に対して、怒りだけでは無く、指導の意味があったのかもしれない。その鑑定人は他界してしまったが、その発言の後、その失礼な御人から、階段から突き落とされたとの事でした。その現場に小生は居合わせた訳では無いから突き落とされた話は多少の脚色された誇張表現と理解するが、趣旨は『あなたは虎の威を仮る狐で有り、あなた自身は大したことない』と言うことと推定する。この話は割と有名であったから、小生は日々、謙虚さを保つことができた。やはり先輩鑑定人のおかげである。時々感謝する。 組織を離れると、人間は所詮、『ただの人』である。バックに虎がいない狐で ある。
|