小生の住む長崎市郊外では昼12時から1時までの1時間、建築現場の 職人である大工は昼寝をする。 施主がそこに居ようと関係無く、弁当を食べた後、昼寝をするのである。なんと、棟梁である親方自ら、建築資材の片隅で熟睡である。 現実に施工を手伝ってみると、その理由がすぐ理解できた。 職人には工期が有り、○月○日までに木工事を終了させないといけないとなっている為、昼と午後3時以外は休憩が無く、朝一番(現場8時集合)から夜、投光器をつけてでも施工をするのである。そのことを考えれば、これが毎日続くのだから、昼寝は当然であり、健康の為、また 危険防止の為、必要な行為である。 欧米風に言うと正に合理的である。 職人の昼寝は科学的に、医学的に、合理的に考え行なわれている仕事の範疇である。 寝ている職人達を目の当りにすると、まるで穏やかな春の一日であり、上記の様なことを熟考しての行為には見えないが、まったりと休憩する技術者の以外な一面を見る。すると『ああ、きっと焦らず、いい仕事をするんだなあ。』と思えてしまうから不思議である。 参考までに、とび職だけは昼寝は認められていない。ご存知の様に、鳶は昼寝をすると、平衡感覚が狂い、高所の足場から落ちる危険性がある。前日の飲酒も禁止されている。 いずれもプロの仕事人である。理論的に言うとそうであるが、異国情緒あふれる長崎の職人の文化かもしれない。 昼寝をする棟梁の姿を垣間見ると、計算処理に追われる我々鑑定人は人間として間違っている様な錯覚を覚える。 子供が秋にトンボを追いかけ網で必死に捕獲する風景を想像すると、棟梁の昼寝はそれに似た良好で快適な住まいを創造するひとつの過程に過ぎない様な気がする。 平成24年5月29日
|