新価払保険主流の現在、時価損害額の考えは不要なる考えが横行している。しかし、新価保険は復旧義務が有り、復旧しない場合は時価額での支払いであるから、時価損害額算定の一定の定量化や一つの目安はやはり捨てられない。 業界で囁かれる「ケースバイケース」や「程度問題」という言葉で解決してはいけないと考えている。 蛇足ながら、「ケースバイケース」とは原則にとらわれず、一件ごとの事情に応じて問題を処理することであるが、俗に言う『原則として認めない』という組織の上司の発言があるが、その意味は『実際には認める』という意味である。 いつもながら脱線する。
小生の尊敬する大阪の○○技術鑑定の○○鑑定人と小生は平成10年頃に大阪市内の居酒屋で新旧交換控除について議論のみならず、論文にて議論したことがある。 その鑑定人と小生は未だに交流が有り、半年前、大阪で食事をしながら友達感覚で鑑定について意見交換をした。ちなみに小生が友達と思っているだけでその鑑定人は小生のことを嫌いかもしれない。いわゆる片想いかもしれない。 年寄りになるとその様なことで悩まない前向きな考え方で生きている。 残り少ない人生、自分の性格を変えるつもりは無い。現在胃潰瘍になり、医者の世話になっている。またまた脱線する。
新旧交換控除はNEW FOR OLD(以降NFOと記載。KYが空気が読めない等と言う俗説とは異なる)読んで字の如く、『損害箇所の修理により、当該箇所の価値増が保険の目的の全体の価値増をもたらした場合に限り、その増加した価値増部分を修理費(新価損害額)から控除することを言う。反対に価値増が無いと判断される場合には控除しない。』 という考え方であり、前者、後者併せてNFOと呼称し、『新旧交換差益』という呼び方もある。 その場合、価値増とはいったい何ぞやとの疑問がでてくるが、修理復旧を施したことにより、保険の目的の耐用年数の増加が考えられる場合と考えている。 『保険の目的である建物の美観が良くなるから、NFOを適用した。』とたまに聴いたりするが、これは誤りと考えている。なんとなればNFOを算定する時、一般的に保険価額算定時の減価控除率を参考に算定している。(後述する『部分NFO』は例外として) 火災保険普通保険約款第四条『・・・支払うべき損害の額は、保険価額によって定めます』という約款で言うところの時価額算定時の減価控除率算定に基準をおけば減価控除率算定時には目的の耐用年数から経年減価率を算出して、経過年数を乗じて計算しており、美観の要素は入っていないからである。18年前述べた様に『美観がよくなる事』とは修理復旧の範囲が損傷範囲から面積的に広くなっていると考えると、保険の目的全体の耐用年数の増加が推定されると言い換えられると思う。 改めて申し上げるが、小生の意見が正解か誤りかという問題ではなく、あくまでも、鑑定の寄りどころや一つの目安として検証頂きたい。 加えて、新旧交換控除の%や考え方が経験豊富な優秀な鑑定人による非常に大切な部分で有り、あえて公表を差し控えている可能性が高いと考えていることは否定しない。 ※教えてくれたっていいじゃんと思うが、各鑑定事務所のノウハウで有り、言わないだろうなあとつぶやく。
鑑定実務上用いられる新旧交換控除の適用方法 ① 建物、構築物等の不動産の場合 (1)NFO=0% 損害が発生した保険の目的を復旧するに当たり、その復旧により、目的の耐用年数が増加する等の価値増が無いと判断される時。 (2)新価損率NFO これはベテラン鑑定人に昭和62年にご教授頂いた方法で下式にて算定。
保険価額算定時の減価控除率○%×新価損害額(修理費)/再調達価額=NFO% これは数学的に物理的に説明がつき易い手法である。
(3)Value同率NFO 保険価額算定時の減価控除率 ○%=NFO%(参考までに、ある損保社では 新価特約や価額協定特約との差別化をする為に原則、このNFOを適用している。 それは乱暴な理論では無く、新価特約を付保しているいわゆる割高な保険料をご負担頂いている保険契約者との差別化と考えればある意味正しい) ※前述の様に原則とはいろいろな意味がある。ここで減速いや失速する まじめな文章の中で読み手の好感を頂戴する為に韻を踏む。
昭和59年度版の新日本保険新聞社発行の『建物評価と損害算定』という書籍では、この案にて説明されているから一つの意見として正しい。
(4)部分NFO 建物の造作設備の付属物(例えば看板や日覆やテント等) 保険の目的の建物に設置された(外壁に固着)看板が風災等で飛散し、その被害が看板のみの場合、その看板の耐用年数から(建物と異なり、償却が早くNFOが大きくなる)NFOを計算する。 従って、仮に建物本体が経年著しくても、看板は新品の場合、NFOは少なくなる。
(5)1/2、1/3 NFO 保険価額算定時の減価控除率○%×1/2とか1/3
②動産の場合 (1)動産に掛かる工事費には適用せず、動産の部品や機器のみ適宜、適用する。
事例 損害物件:電子検査装置 再調達価額 \100,000,000 損害範囲:落雷の誘導雷による過電流の影響に因り電子機器である基盤類が 短絡,焦損,通電不能による損傷。
損害程度:保険の目的である機械が全損に至らず、新価損害額 \7,000,000 で修理可能。
内容:交換を要する部品であるプリント基盤等は \500,000で残り \6,500,000が取替えに当たる人件費であった。この場合のNFOをどう考えるかということ。
鑑定結果 ①500,000×(100%‐6%)=470,000・・・部品代 ② 6,500,000・・・工事費 6,970,000(①+②)・・・時価損害額
根拠 工費費用(エンジニアによる特殊作業)は特殊機器につき増大するが、 あくまで現状復帰の取替え工費であり、工事費用そのものにNFOは適用しない。 部品代は機器の耐用年数の増加につながると仮定し、部品代のみNFOを適用した。基盤は新陳代謝によりどんどん取替えられる部品であり、事故による取替えが価値増有り(耐用年数の増加有り)と考えられる。
価値増として控除されるべき、新旧交換控除に関する考え方 (具体例におけるNFO適用の妥当性) 風災害で目的建物の屋根瓦の80%が飛散、割損し、復旧に当たっては施工場全体の屋根の復旧で新価損害額を認定した場合。 【屋根の全体の復旧により、目的の耐用年数の増加という価値増が考えられるのでNFO適用】 総合保険の盗難事故で目的建物の玄関のサッシの硝子が割損した場合。 【サッシの硝子を交換しても、目的全体の耐用年数の増加が考えられないのでNFO控除を適用しない(NFO=0%)】
漏水事故で総合保険に加入している目的建物の賃貸アパートが濡損し、入居者105号室の3DK全体の内装を修理しないといけない場合。 【アパートの内装は一般的に入居者が変るごとに内装仕上げが遣替えている。ということはこの修理で改装工事一回分の耐用年数の増加が考えられる。従ってNFO適用。】
風災害で目的建物である工場の屋根が全部吹き飛ばされ屋根全体と修理したが、この屋根は一ヶ月前、全面葺き替えをしたばかりであった。 【殆ど新品状態であった屋根をまた新品にしても目的全体の耐用年数の増加が考えられず、NFO控除を適用しない(NFO=0%)】
解体工事の保険上の整合性
焼損した保険の目的である建物が分損で修理復旧が可能な場合を想定する。 破損部分の撤去、斫り、ケレン、解体費は保険価額の中に存在せず、元来、解体費用は無効ではないか?という疑問点が浮かび上がってくる。 しかし、火災保険では、損害があれば、損害発生直前の状態へ戻す際のいわゆる現状復帰を目的としている事から、保険金額の範囲内でも解体工事費は塡補の対象となりえる。(残存物取片付費用保険金に該当部分の産業廃棄物処理費用等の捨て代を除いて) 補足として、保険の目的が全損の場合はどうか?との疑問が出てくる可能性が有るので説明すると、全損の場合、解体工事費自体がすべて、残存物取片付費用保険金に該当してしまう。 言うまでもなく、損率100%ですから保険価額=損害額になる。 話を元に戻して、それでは解体工事費はNFO適用に該当するかというと、答えは『NO』である。 損害額=時価損害額(新価損害額‐NFO控除)+ 解体工事費 である。
前述の②の例以外の場合であるが。
異論についての防衛策ですが、解体工事費自体が見積もり作成における机上論である為、実際、工事において同じ作業員(職人)が施工するから『取替え』であって、『取り外しと再施工』に分けられない。 従って、解体工事費用も一緒にNFO適用である・・・という考え方も存在する。 新しい新旧交換控除 部分的に、例えば屋根については20%、軀体については10%、外壁については30%である等の新旧交換控除
約款上、損害額は保険価額により定める事となっている。 一般に保険価額算定時、部分的な要素は考えずに計算されている。 補足致すると、耐用年数から経年減価率を出して、これに経過年数を乗じた減価控除率にて保険価額が算定されている。 部分的なNFOを適用する場合は当然の事ながら、保険価額算定時から部分的な減価控除率を算定していなければならない。 今までのVALUE算出の理論を根本的に揺るがす方法となる。 筆者においては、この考え方の保険価額算定をすることができない。 28年間色々、研究しているが、非常に難解だと思われる。 なぜなら、仮設工事の足場は減価控除率から外して考えないといけないとか、外部足場は外壁の為の部分が○%を占めるとか、竣工事の美装工事は減価の対象ではないとか、建具のアルミサッシュや硝子は半永久的な耐用年数であるとか、左官工事は単価が材工で表示されているのに部分的にどう判断するのとか、様々な難問を抱えていた減価控除の手法を原価方式による手法でクリアーにしていた今までの『保険価額評価』を覆す事になるからである。
最後に 鑑定人諸子で新しい新旧交換控除を採用し、実際に適用した事例をお持ちの鑑定人は、筆者までご連絡頂ければ幸いです。 このレポートは平成8年作成の小生の論文をリメイクしたものである。 尊敬する大阪の○○技術鑑定の○○氏の勘案した√(ルート)NFOについては同氏に直接聴取下さい。はたまた小生に異論のある御仁はたくさんいらっしゃると思いますが、意見は対案を以て論文で反論を希望致します。 この業界はすぐ、クレームがつくので、一人のロートル鑑定人の戯言で解決して業界発展の為に、いろいろな論文を期待しております。 平成27年1月9日
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