『事務所は小さい方が良い。鑑定人は収益を上げるのが目標では無く、仕事の対価として報酬を頂くべきであり、事務所を大きくして従業員をたくさん雇用すると、経営が主体となり、いい鑑定ができない。ハマベさんがこの仕事を続けるなら事務所の会社としての拡大路線は誤りだよ。客観的に損害を見ることに徹して欲しい』とある損害保険会社の責任者の言葉である。この方は既に御年配となり、この業界から引退された。定年退職であるからまさに『お疲れ様でございました。』である。 今から18年くらい前に現場立会時、車の中でご教授頂いた。 当時、弊社は鑑定人2名と事務員1名で納得いくまで、一生懸命現場へと足を運び、被保険者,業者,関係者,代理店と議論を重ねた。弁護士の先生のところへ呼び出され、査定担当者と一緒に議論した。 交通費は抜きにして、再立会いしても、弁護士の打合せに参加しても、 鑑定料は変わらない。上述の通り、鑑定額の対価であり、鑑定料は決まっていた。 支払対象外事案で、無責協定等の事案は被災者に説明し、苦労した結果、ご了承を得られ、鑑定書を提出しても、料金は最低鑑定料である。 これは業界で決まっているから止むを得ない。 尊敬するベテラン鑑定人が『ノークレーム』の時程、鑑定料は倍額欲しいよなと日々おっしゃっていた事が懐かしい。
業界では料金のルールが有る。独占禁止法で料金は決まっていないはずという理論もあるが、無責案件での同業者の相場はほぼ同じである。 自由競争の時代と言われれば、料金が下がることはあっても、上がることは無い。別にこの程度のFEEで競争するつもりは無い。 過去の事実として、昭和の時代、公正取引委員会からのご指導を受けるまでは鑑定料は全保険会社が全く同じ料金表を配布していた。 これが間違いでは無く、公正さを重んじる職業で料金が各事務所バラバラは良くないとの配慮であったことは間違いない。 近年は各社バラバラで当たり前となり、各事務所ごとに微妙に料金が異なる。公取委の指導で自由だという御仁もいるが、企業努力で低料金にしろという理論は冒頭申し上げた様に公平に客観的に鑑定をするという理念を覆すことになる。割のいい仕事しか受けなくなる鑑定人になってしまう。 理想と実態の違いは『理論と実勢の違い』である。
東日本大震災でライバル事務所の一サラリーマン鑑定人に『この地震で儲かってウハウハですか?』と言われた。失礼な御仁であったが、同氏は寝坊して 対策本部に朝遅刻して被災者のアポイントの時間に間に合わず、保険会社に迷惑を掛け、出入禁止処分を受けたようだったから、 『何だ。ただの若造か。』と自分の頭の中で整理した。 この御仁の所属する鑑定事務所は弊社以上に鑑定料を頂いたはずだから この様な発言は失礼極まる。小生は九州から被災地に赴き、家族と離れ 長期出張(3年2か月)していたから、個人的には辛かった。子供の顔を見たかった。別に利益を上げようなんてさらさら無かった。
鑑定事務所が利益を上げると納税金額が上昇するから国に貢献できるはず。 更には国が指導する従業員の賃金アップという考えにも賛同できるはずが、この業界は儲かると悪という風評にさらされる。 ましてや同業者の一部の人間がこの様な発言しかしないのである。
幸か不幸か、弊社はあまり法人としての利益が上がらず、苦戦しているからお取引先の保険会社から『儲かっていいね。』なんて言われない。 なんだかなあ…とつぶやく。 平成27年1月28日
|