この仕事の大変さを一般の方々に、損害保険の査定とは無関係の御仁に その仕事の内容について説明することは難しい。 10年程前、知人の紹介で、弊社に入社したい人がいると打診があった。 採用するかどうかは抜きにして面談し、その複雑な業務内容を説明すると
『要は保険会社にレポートを出すだけでしょう。』とおっしゃった。 この発言の時点でこの御仁の採用は無い。
問題発言の御仁の真意が何かは抜きにして、高学歴のその御仁には自分 でも簡単にできる楽な仕事であると言いたかったのであろう。 簡単な仕事では無いことを説明するのも時間の無駄であることは読者もおわかりだろう。 採用してほしいと就職活動している本人が雇用してもらう弊社 に上からの発言である。 立場をわきまえてない人は世の中にごまんといるが、その典型的な例である。
この事例と全く異なるケースがあった。 現場調査時の事故の被害者のケースである。 『ほら、調査してみろ! いくら払ってくれるとや!(いくらはらってくれるのか)』 先日、現場で殴られそうになった。保険会社の社員と同行しての賠償の現場であったが、被害者の事故への怒りがこちらに来た。 事故を発生させた加害者が応急処置もせず、謝罪もせず、事故現場の後片付けもしていないとの主張であった。 紳士的対応と言葉を選んでの説明をしたが、全く無駄であった。 鑑定人も保険会社も法律上の賠償責任を説明し、何の問題も無い。 しきりに謝れとおっしゃられても、事故を起こしたのは小生では無い。 『大変でございました。お見舞い申し上げます』とは言ったが、 復旧方法の当方の説明は聞き入れてもらえず、 損保社員にまで殴りかかろうとした為、小生が仲裁に入り、現場を引き揚げた。 加害者の過失による事故ではあるが、被害者の暴力的な行動は明らかに間違っている。 結局、法的手段に委ねる事となってしまった。
ちなみに小生は運動神経がすこぶる良好であるから、殴られそうになっても、かわす自信があるから大丈夫である。 もちろん、その様なことが無い様に、被害者の心情を鑑み、礼儀作法や 丁寧な発言に努めている。 殴られそうになったら、相手との間合い、相手の手の長さを瞬間に判断し、距離を置く。 しかしながら、キック(蹴り)については想定外である。 多分よけられない。
昭和の時代に、尊敬する先輩鑑定人が内装の色違いの話し合いで もめた際、被害者から回し蹴りが飛んできて、回避できなかったと告白されたことがある。 先輩曰く『あの時、俺は若かった。正論で話し合いしてしまった。』と笑いながら懐かしそうであった。
賠償責任保険において、被害者の立場の方が上では無い。 被害者の大変さや心情を理解して対応しているが、被害者と賠償責任に関わる保険者は立場上、同等である。同等でなければならない。 被害者の一方的な考えで保険者と戦うことは間違いである。
議論は問題ないが暴力はいけない。結果、損をする。
さあ、『要は保険会社にレポートを出すだけでしょう。』の仕事かなとつぶやく。
平成27年8月4日
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