和瓦の場合、㎡当り単価いくらの前に瓦店の本当の計算方法を記述する。 その算定方法はベテラン鑑定人には周知のことであり、改めて述べる必要は無いがこの積算方法がテキストや建築の本に記載が少ない。 そこで、小生が文章にしてみようと考えた次第である。
棧瓦を基本として、軒瓦,袖瓦,角瓦,棟鬼,隅鬼,座鬼,紐丸,平熨斗,面戸熨斗,棟巴,隅巴,(長崎ではあまりない)雪止瓦等々。
実際に長崎市で風災の被害が有った際、屋根に登って枚数を数えた。 たまたま知り合いの瓦屋であったから、その大将(御年70歳)に 『おい、ハマベ、お前も屋根に登って一緒に割れた瓦を数えろ』と言われ、しぶしぶ屋根に登る。 遠くから遠目で見えると発言したが、そこは長崎の職人、人の言うことは聞かない。はしごを掛けて『後から来い』と指示される。 「俺が登る時に、はしごが倒れない様に下で持っといてよ(支えておいてください)。」と小生が言うと、はしごの上部を軒樋の金具にひもで結んで、大丈夫だと主張する大将が居た。 この大将とは20年前からの知り合いで、その職人としてのプライドが高く、枚数をごまかしたりしない御仁で、信用は有るから、屋根に登っての割損瓦の数量拾いはお任せしようと考えた。 しかし、日本の文化の中心、日本の首都である長崎の職人はそれを許さず、お前も登って来い、である。 「下から見えるって言ってんじゃん。」等のたわごとは通用しない。
現実に数えると、 陶器瓦の棧瓦20枚,軒瓦10枚, 隅鬼1枚であった。足し算すると31枚である。 しかし、そのカウント方法は棧瓦20+軒瓦10×3.3倍+隅鬼1×50=103枚である。 これに単価200円/枚を乗じる。 31枚×200円/枚=6,200円では無く、 103枚×200円/枚=20,600円 これに葺替え手間2人工×15,000円=30,000円を加算して計算できる。 合計50,600円 この倍数計算の倍数を『枚立』という。過去にも少々触れたが、枚立計算で瓦を拾い、そこに手間を加算すれば、屋根の修繕工事費用が計算できる。 瓦店は工務店の下請けで入る場合が多いから、この計算書式はすぐ、 作文されてしまう。 屋根工事50,600円が屋根瓦補修工事1式63,250円と変身する。㎡当りいくらと書けないから、その流通過程でそうなる。 破損瓦が31枚だから、63,250円÷31枚=2,040円/枚かあ~と分析するのは誤りである。 実際の建築現場が瓦店の金額に中間マージンを載せての請求が当たり前の相場である。我々鑑定人に瓦店の原価計算表が提出されるわけでは無いから、この知識を頭にいれて、判断する必要があるといいたい。 日本の文化である瓦、本件は陶器瓦の例であるが、基本はたった1枚200円しかしない。そこに役物が加わり、枚立数が増え、人件費が加わり、計算されている。 近年、その中間マージンをおかしいという人がいるが、中間マージンは当たり前、それは世の中の常識であり、流通,建築業界の常識である。 仕入原価で商品を販売しろという愚かな発言と同様である。 瓦の枚立計算方法は教科書にも記載されず、悲しい現実であるが、ちょっとだけ記載した。 まだいっぱい、書きたいことがあるが、瓦屋の大将にあんまり書くなよ、企業秘密であると怒られそうであるから、この辺でやめる。
この様な長崎の瓦屋の見積書の書式は同業者でほぼ書式が似ている。 表に出ないのはその取引先が工務店であり、建築業者であるからに他ならない。この書式を入手している小生はその大将に怒られるから公表は 控えている。 しかし、その基本的な考え方は鑑定人が共有すべきことである。 平成27年12月18日
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