組積工事(ブロック塀の積み方)の現場の実態
建築や土木の書籍で記載されている様なブロック塀の基礎は現場ではあまり見られない。 実際に、ブロック塀の破損した現場で解体工事を観察するとよくわかる。
長崎の職人は同塀の基礎を下端(したば)といい、土壌を『かき板』と呼ばれる鍬で掘り、そこにモルタルを充填して基礎とする。 理論でいうコンクリートでは無く、骨材(砕石)を入れていない砂と水とセメントのモルタルである。 その基礎が乾燥する前にコンクリートブロックを並べていく。 ブロックとブロックの隙間の目地部分には10m/mの間隔が必要となるが、 日本のニューヨークである長崎の左官はすごい。 スケール無しで勘のみでブロックを並べ、 小生が後から測るとちゃんと10m/m間隔になっている。
『雨の日以外、毎日やっている(施工している)から測らんでいい(測定しなくて大丈夫)。』と言うベテラン左官の匠の業である。
水糸は張らなくていいのかと聞くと、『それは左官になって20年未満の『はなたれ職人』だ(駆け出しの見習い職人)。』と言われた。 目で見て「水平」と「立ち」がわかる。 厚さ150m/mのブロックであったが、縦筋をいれるのは1段積んでから後からの作業であった。 更に5段積んだら今日は終わりと帰る。 そう、ブロックの目地が自重で潰れてしまうから、目地モルタルが乾くまで、ほっとくのである。 施工中のブロックの傾斜の回避方法に他ならない。 アルミニウムの溶接後の『時効硬化』理論と同じである。 近年、若者の発言でこの様な行為を『ホットキーノ』…(ほったらかす意味)の呼称するらしい。
物事が揉めてくると進展しない場合が多く、ほったらかしにすると良い 結果がでることがあるという『ゆとり世代』の合理的な考え方である。 アルミニウムの時効硬化の現象を知っての考えとは思えないが。 短気でせっかちな性格の小生は「今日中に10段積んで下さいよ。賠責で揉めていて、早く復旧しろと被害者がうるさいんだから」と心で思いつつ、職人を見送る。 『耐震偽装の姉歯問題』で鉄筋の数や長さに神経質な被害者が鉄筋の横筋を必ず入れろと騒ぐが3段積んだ際に長さ4mの鉄筋を横に入れ、またブロックを積んだから横筋が見えない。
後から検証できないから小生が施工中の写真を撮影し、最後に見せて被害者のご了承を得る。 現場の苦労はなかなか伝わらず、お叱りを受けることは日常茶飯事の鑑定人である。皆様ご経験の通りである。 きちんと現場で話をつけておけば良いのであるが、話がつかなかったりすると査定パーソンから次回の仕事が来なくなるという傾向を否定できない。 皆様、鑑定人も人間である。すべてを把握して一生懸命仕事しても話はつかない場合もあり、そこはご理解を賜りたい。 立派な職人であるベテラン左官に『左官は水はいるが、雨は要らん。雨の日は仕事ができない。』とおっしゃり、 『餅は餅屋である。素人が左官の真似はできない。』とのたまい 道具だけ持って、現場から50ccのスクーター(原付)で去って行った。
これが、ハーレーダビッドソンくらいの大型二輪で現場から去っていたなら、カッコいい粋なダンディーだったのが悔やまれる。 平成28年2月24日
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