阪神大震災で契約者から元気を頂いた過去の事例
兵庫県神戸市東灘区での現場調査の際、倒壊したり、火災になり、まるで爆弾が落ちた戦後の様な光景であった。
被災した契約者にアポイントの際、『現地は殆んどの建物が被災して原形を留めていないから、目印はローソンがある。その横の家だ。早く来てくれ』と言われ、なんとか開通したJRで芦屋駅まで行き、そこから徒歩で現地に向かった。 目印が無い。ローソンが無い。地図から言っても目の前のファミリーマートの横の家だと思うが、ローソンが無い。仕方無いからファミリーマートの公衆電話から契約者に電話する。
今、ファミリーマートにいると説明すると『そうそう、その横の家だ。』と言われた。 現地に契約者は待っており、電話する小生を見つけて、向こうから近づいてきた。『あのう、ローソンじゃなくてファミリーマートの横ではないのですか?』 年輩の御仁は『そうそう、ローソン、ローソン』
どう見てもローソンではない。質問してみると、『関西ではコンビニのことをすべてローソンと言う』と返事を頂いた。 後日、大阪の鑑定人に聴いたら、その御仁だけの主張だと笑われた。
屋根はすべて落下し、柱はすべて倒れ、外壁モルタルはすべて剥落し、 基礎は調査不能、一部焼損した建物で空間は潰れて居住不能になっていた。 小生は鑑定人として、建物の判定を『全損』と説明し、当時地震保険金額は限度額1000万円であった為、そのことを説明した。
すると『お前は鑑定人でもなんでもない。1000万円地震保険つけて、その答えが1000万円というなら誰でも鑑定できる。別に資格なんて要らない。だから、お前の権限と裁量で少し色をつけてくれ。あと100万か200万足してくれ。そうしないと復旧できない。』
小生は真面目に主要構造部の損壊の説明をし、地震保険金額1000万円しか払えないことを紳士的に真摯に説明した。
すると被保険者曰く『冗談やがな。テレビで見て知っとる。1000万やろう。』 お前はボケと突っ込みがわかってないと言われた。
『被災者相手にジョークは言えない』と発言すると、こうなったらなる様にしかならないから、前向きに冗談でも言って頑張るんだと御教授頂いた。
関西人はすごい。復興が急ピッチで進んだのはこの様な地域性がもたらした成果かもしれない。
ちなみにこの話を大阪の鑑定人に話すと、『その契約者は住まいは神戸だが、きっと育ちは大阪だ。』と言われた。
九州人にはなんとも理解できない。
これだけ発言が出鱈目な被保険者からから後日、お手紙が届いた。 『保険会社から保険金がおりた(支払われたと言う意味)。 ありがとう。』 それだけしか書いてないが、手紙を貰って納得したんだなと一息着いた。 うーん、いい人か悪い人かわからない。 少なくとも元気は貰ったと思いながら、あれから21年経過してしまった。 平成28年3月14日
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