『あんた、そこのひび割れ見逃した』よくあるイチャモンである。 カメラ片手に画板で図面を引き、傾斜計を持ち、基礎のクラック被害を調査している最中のクレームである。 このクレームは雨の日に多い。雨天時は視界が悪く、基礎が雨で濡れるとクラックがわかりにくい。 建物の4面を全部廻って、再度、クラックの再確認をするから、いちいち言われなくてもいいと心で思う。 『お客様、お気付きの点があったら教えて下さい。』と提言しているにもかかわらず、その様なご指摘は多い。 こちらのアラを見つけて攻撃しようとする人々も残念ながら存在する。 その一つのクラックを見逃しても、実は体制に影響がない場合が多い。 無責か一部損ぎりぎりの時は一生懸命、クラックを探して判定しているのであるが、現場全体の事を考えきれない被災者には伝わらない事象である。 鑑定人諸子は慣れっこの会話であろう。
我々鑑定人はその昔、とある協会で『鑑定人という資格名は契約者に威圧的な印象を与えるからサービス人とか調査サービスマンとか支払アシストマンという名称に変えよう』という議論があった。 当時の鑑定事務所の経営陣もこぞって賛同していた。 賛同しているメンバーを見ると、この御仁達は明らかに20年くらいは現場に行ってないただの経営者達の集団であった。 鑑定人という資格名でその責任と中立的な立場を表現しているのに そのふざけた様な新名称はなんだと抗議の声があがった。 我々は保険会社の代行サービス人では無い。それではプライドも何も無く、 被保険者に対して重みが無い。 しかし、自分が経営者になってみると、仕事欲しさに保険会社に媚びを売る考えを真っ向から否定はできない。 経営陣も仕事の受注を増やしたかったのであろうと優しく考える。 今現在、名称は変更されていない。きっとそのことが、本件の答えであろう。 地震保険の鑑定業務で、鑑定人のいう資格名称でやることが、大切だと思う。 平成28年6月6日
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