更地な日記 (現代版の鑑定人の更級日記)
更級日記は平安時代の日記であり、菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)が書いた素晴らしい日記である。 その内容については高校生でも周知の内容である。 火災事故が発生して、現場に赴いた時に、建屋が完璧に解体撤去され、整地作業が終了している場合がある。
被保険者の事故報告の遅延や金曜日の夜出火して、土曜日に消防署の 現場検証が行われ、人災が無かった場合は日曜日に解体作業が施工され、終了し、月曜日に立会調査すると現場保存されず、見事に更地となっている場合がある。
被保険者は全焼を主張し、保険金額全部の請求をしてくる。 当方はこれでは全焼だったのか、半焼だったのか、はたまたボヤだったのか判定不能である。
せめて解体前の写真くらいあればと聞くと決まってこうのたまう。 『消防署が現場検証で写真を撮っていたから、消防署に聞け!そんなことはどうでもいい。保険金を全額払ってくれ。』
おいおい、何言ってるんだよ。更地になった現場では図面どころか損害の判定は不能である。
この様な現場を日本文学の古典を文字って、『更地な日記』と称して、事情聴取したことを文章におこす。正に、日記である。
間取りも寸法も調査できず、建物の面積すら測定不能、ただの 事情聴取である。『更地な日記』たる所以である。
ちなみにその足で所轄消防署に行くと、警察署に行ってくれと言われ、警察署に行くと『消防署から詳細のレポートが提出されていないし、あなたに写真を見せることはできない。現在、調査中。』と決まり文句が出る。 更にもう一度消防署にいくと、警察から連絡があったのか、 『調査中。』のお言葉を頂戴する。 警察署も消防署も言っていることは正しい。 保険金請求は民事上のことであり、『民事不介入』の原則の通り、刑事上の調査資料が見せてもらえることは無い。
過去に火災事案で、裁判所が警察や消防に協力を依頼した。 さすが、司法の権限である。すべての書類が見事に提出される。 裁判資料で実物を弁護士経由でお預かりしたが、火災調査資料は素晴らしい内容で、現場の出火原因の探求については驚くばかりであり、 我国の警察や消防は素晴らしい限りであった。
約款で言うと、火災が発生した場合『保険契約者または被保険者は遅滞なく保険会社にその旨を通知しないといけない。』 通知義務と現場保存の義務である。読者である賢者諸氏は説明の必要は無いであろう。
『現場に行ったら更地だった。』この事態から物も無いのに経緯書を書くという『更地な日記』がスタートする。 平成28年10月27日
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