広域災害におけるコントローラーの役目 風災等の広域災害で工場物件を鑑定人に一日3件立会させて、夕方遅く 対策本部に帰社した時に、本日のノルマと、書面査定を机に10件置いて さあ、至急算定しなさいと指示するコントローラーを目にする時がある。 解決率(処理率)向上と被保険者に保険金早期支払いの為であるが、 正しい様で、正しくない。 工場物件を3~5件立会させたら、その整理で帰社してから数時間を要する。 その後、書面査定をしていたら、深夜までの作業となり、その鑑定人は潰れる。 その状況が2ヶ月続いたら、体を壊して、その鑑定人はその殆どが離職してしまう。 その鑑定人のキャリアを考えて処理体制や処理の日を与えてやらないと コントローラーはただの采配係としての機能しか持っていないこととなる。いわゆるデリバリ係である。 タクシーの配車係となんら変わらない。 タクシー会社を否定しているのでは無いことを申し添える。
集積クレームで忙しいのは理解するが、上記采配は鑑定人潰しの行動に他ならない。こういう事は割と議論されず、保険業界は進んでいる。 鑑定人がそのキャパシティーをオーバーして消化不良を起こして、パンクして処理遅延となってしまう。 残業時間等が完全に無視され、午前様まで、働いても、次の日、朝一から現場立会を入れて来る。 ベテラン鑑定人は要領よくこなして、ボールを投げて、先方に下駄を預けて督促を受けない方法を知っているし、効率の良い立会や効率の良い処理方法を知っている世渡り上手が多いが、上述の苦しみを過去に経験しているからやれることである。
鑑定人は消耗品であると割り切れば、パンクして潰れたら、違う鑑定人を雇えばよいという御仁も残念ながら存在している。 しかし、広域災害時はどの保険会社も鑑定人不足であり、次の補充等期待できる訳では無い。 現行勢力で早期解決,保険金早期支払いの為には、1件1件、確実に終了していくことが、一番の解決方法である。
鑑定人歴が5年目くらいの人物がコントローラーになると決まってこの悲劇がおこる。 小生もコントローラーを経験したが、保険会社と鑑定人の間に挟まり、苦労した。 責任者は『お客様を待たせるのは良くないから立会率を上げなさい。』と指示するし、現場の鑑定人はペンディングを溜めて、アップアップしているし、コントローラーも辛い部分はある。
過去の広域災害(平成3年9月27日:台風19号)の処理で、小生はまだ5年目のペーペーであり、コントローラーに指示に従い、日々頑張っていた。 はっきり言って辛かった。仕事が多すぎてパンクしそうであった。 日曜日は休暇扱いをしてもらい、対策本部でレポート作成をしていた。 今でいう『サービス残業』であろう。
そのコントローラーにとある偉い方が、お客様が困っているから、鑑定人が一日当たり、10~15件立会しなさいと指示していたが、1件当たり1時間としても15時間掛かる。 事務方がわかってないのは、移動の時間が含まれていない。 もめたら1時間では済まない場合も多々あるのに、そして肝心なのはレポート作成の時間が完全に無視されている。 人間は一日6時間は睡眠を取らないといけないことや食事を取らないと死んでしまう等は軽視されてしまう。
損害額や保険価額の算定や協定作業の部分も完璧に無視されている。
その件数を廻るのは客に挨拶だけでいいと言う指示と全く変わりはない。 そして夜間は現場が見えない。明るい昼間に調査しないと被保険者の理解は得られない。 当時、ベテラン鑑定人のコントローラーが出入禁止覚悟で一日当たり、4~5件で勘弁してくれ。そうしないと鑑定人が潰れてしまうと交渉して、なんとかなったが、そのコントローラーは偉大であった。過去の経験がなせる業である。 被災した被保険者に早期支払いは正しいが、現場に行く兵隊である鑑定人の体力と能力を温存させて、進めることが一番の早期解決である。
第二次大戦のインパール作戦での大失敗は兵隊を無視して作戦のみ優先して10万人中、3万5千人の兵隊が飢餓や病気で戦死した。 歴史が証明していることが、なかなか学習されずに現在に至っている。
ちなみに小さな零細企業の鑑定人である小生は広域災害に応援に行くとコントローラーになることは無い。
優秀な将来有望な困っている若手鑑定人にアドバイスして、効率の良いやり方を伝えて来たが、その数名が必ず離職に至るのは悲しい。
平成28年11月4日
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