類焼先への賠償責任 その2
皆様ご存知の様に、失火責任法について説明の必要は無いであろうがここはおさらいで記載する。
民法709条の不法行為で失火により他人に損害を与えた場合、原因者は、 その失火につき「故意または過失」があれば賠償責任を負うことになる。 この法律ができた明治時代に、日本には木造板張の建物が多かった。 新建材である不燃材が無く、一度火が着くと消火が困難であっと言う間に燃え広がる。 この法律をそのまま適用すると失火者に過大な責任があり、事実上、 損害賠償を負担することが困難であると判断された。 依って、失火(過失)による不法行為の場合は民法709条を適用しないで、過失による失火の場合は賠償責任を負わない法律となった。 そこで、現場の実態を経験値から述べる。
失火により自宅が全焼し、近隣の建物に類焼して、道義的責任を追及される場合があった。もちろん、法律的に賠償責任は発生しない。
しかしながら、住宅街で火災が発生すると、このトラブルは起きる。 類焼先が十分な火災保険の付保が無く、損害額の補てんが損害額全額を下回った場合、法律で賠償責任は無いと主張しても、類焼先は失火者に請求してくることが多かった。
過去に裁判になったことがあった。 失火者が訴えられ、失火者が依頼した弁護士事務所に呼ばれて、事情聴取を受けた経験有り。失火者が保険契約者であったから、仕方なく応じた。 失火者の担当弁護士が小生を呼び出し、戦前生まれの先生で、敬語を知らない御仁であり、上から目線で質問する。
我々から情報を引き出すことが無償だと勘違いしている先生であった。 若かった小生、その時『用が有るなら、弊社を訪ねて来て下さい。協力はするが、鑑定人の立場に関係無い賠償責任に巻き込まれたり、法廷で証人となる可能性があるのに無償で呼び出さないで下さい。しかもあなたは命令口調で質問する。 あなたとの利害関係はございません。弊社は保険会社からの依頼で仕事として損害調査を行っただけだから、別に裁判に有利な発言はしないし、事実関係の真実を述べるしかない立場ですよ。』
保険会社の指示であれば、協力はするが、小生は当事者ではないという 主旨を発言し、口喧嘩になってしまった。
裁判所からの命令であれば出頭する。 単なる弁護士からの指示であれば、協力はするが、交通費や日当を弊社負担で協力したくないと主張してしまった。 多忙な日々の中での出来事であった。
蛇足ながら、それ以降、その弁護士先生とは和解し、仲良くなった。 別件での建物の実務上の耐用年数の考え方や建物の復旧方法や時価の 算定方法など、有料で仕事をくれるという有効な関係になった。 …続く
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