『擦損』の損害認定 擦り切れた歯ブラシ
鑑定用語で擦り傷を「擦損」と表現する。 20年前、潰れた損害をどう表現するか悩んでいた時、 自動車のアジャスターに「圧損」とご教授頂いた。 その節はお世話になりました。
当時、アジャスターの御仁曰く 『アジャスターと鑑定人は損害額が1ケタ違うもんなあ。俺達は100万円超の 損害はヘビークレームだが、鑑定人は1,000万円超だもんなあ。』と言い、 『俺がこの業界に入社した時、調査レポートはかなりの枚数を書いて提出していたけど、今はA4 1枚になってるよ。だってさあ、1日15台も車を 見に行ってごらん。それが毎日続くと損害額の明細重視で文章は簡易レポート書いて進まないと終わらん。』 …平成3年頃のことである。
現在は車両事故は激減し、その当時の多忙さは近年、嘘の様に感じるらしく、晩年を過ごし、昨年、定年退職なさった。 さすがアジャスターである。車好きで、定年直前まで、愛車はスポーツカーであった。
本題に入ろう。『擦損』のことである。
外部からの物体の飛来で担保する場合や風災で飛来物に因り 高価なアルミサッシュに傷が入った場合の損害認定のことである。
①機能的に問題無い。 ②強度的に問題無い。 ③接近しないと損害が解らない。 ④写真撮影もマクロモードにしないと映らない(接写機能が必要)。 ⑤個人的な主観では別に気にならないが、風災で近所の網戸が飛来し、 確かに損害は発生している。
①~⑤の損害の場合を考える。 アルミサッシュはそのサッシュ枠がアルミ合金で出来ており、板金や塗装が不可能である。 そして、その完全なる復旧は取替えしか存在しない。 本件は美観が損なわれた損害であり、機能的な損害は発生していない。 しかも損害は僅少であり、日常の生活の中でもキズが入りそうな場合である。
ならば格落ち損害としてアルミサッシュの部材の○%の損害として認定すべきであろう。 その○%については様々な反論が出るのであえて記載しない。
一方でアルミサッシュの既存の硝子が再使用可能であるから、価格構成割合で サッシュ枠の損害計算という方法も追記する。 じゃあ、免災になった建具内の硝子部分を控除して算定すれば良いと なるであろう。
しかしながら、建築業界の実務として 一般に、免災となった既存硝子の再利用は無い。断言する。 なんとなれば、外廻りの建具である以上、雨風に365日,24時間さらされている。太陽の熱に炙られる。細かい傷がいっぱい入っている。 眼鏡レンズと同じである。 網入り硝子に至っては、端末処理していてもワイヤー部分に亀裂が入っている。 サッシュ枠材を交換するのに、硝子の既存流用は無い。 建具工事の新築現場では建具枠は大工が施工し、建具可動部分は硝子入りで建具屋が持ってくる。 割れたガラスの修理以外は現場で硝子を入れない。 嵌め殺し窓は除外して述べている。
販売禁止になったガラス保険はその昔、割れていない部分に残存価格がある。 所謂、スクラップバリューがあるとして損害額から控除していた記憶がある。
擦り切れた歯ブラシの如く、捨てられるか、その後、車両のホイルの 汚れ落としに再利用するか、掃除用に捨てずにとっておくか等の 選択肢が有る様に、割れが一部の時は残存価格があるという判断であった。
この様に、ロートル鑑定人は「擦り切れた歯ブラシ」として 業界から捨てられるのか鑑定業界に貢献すべきなのか広域災害用に 捨てずにとっておくべきか、小生本人のことなので、微妙である。 笑えない。
追伸、まあ、54歳だし、年金受給年齢65歳まで頑張ればいいかなと考える。
平成29年8月10日
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