寿司屋の厨房の排水口のつまようじ
今から37年前、苦学生であった小生は福岡市の天神の寿司屋で夜に アルバイトをしていた。 奨学金と仕送りでは生活に余裕が無かったからである。
寿司屋の厨房は板前の聖域であり、いくらアルバイトの小生であっても 割烹着を着用し、白い長靴を履いて、毎日清掃をしなければならない。 厨房の床はコンクリート土間であり、水を流しながら、デッキブラシで毎日清掃していた。 コンクリート叩きにカビやコケ等あったり、黒ずんでいたりしていたら大将に お叱りを受ける。
寿司屋の厨房は清潔第一であり、毎日毎日清掃の日々である。 厄介なのは大型業務用冷蔵庫の脚下である。 デッキブラシが入らず掃除出来ない。 バケツの水を勢いよく流すしか方法が無い。
厨房のコンクリート叩きには勾配がつけてありその先には排水口(ドレイン)が あった。 そんなある日、排水口が詰り、排水が流れなくなった。 時を同じくして小生はスーパーカブに乗り近所の麻雀店に出前配達中 であった。
出前から帰ったら大将から怒られ、板さんAに怒られた。 理由は排水口につまようじが詰まって流れなくなったという事であった。昭和の時代は怒られるときは平手打ちを食らう時代だった。 おいおい、俺のせいかよと思いながら詰まった大量のつまようじを見せられ再度叱責を受け、その日は帰れと言われ帰宅した。
いずれにしても身に覚えはないが厨房の床に水道水を流して掃除する事はアルバイトである小生の仕事だった。 異物を流すことはダメだということくらい知っていた。
どうも納得いかず3日後、アルバイト先の寿司屋の女将に 『身に覚えは無いですし、つまようじ等床に落ちていたら拾いますから、排水口に大量にあったそれは小生が犯人では無いと思います。 でもそこまでお怒りなら、責任をとりまして辞めます』と提言した。
実はこの爪楊枝(つまようじ)はお客様用に厨房にストックしてあった新品の大量のつまようじであり、厳しい修行に耐えられなかった 板さんBが、床にぶちまけてしまい、その内の数10本が排水口を詰まらせたことが発覚したらしい。
他の修行中の板さんCが目撃していたが、あまりにもお怒りの大将に 発言できずアルバイトを怒り、平手打ちをしたことでびびってしまい、アルバイトのせいにして幕引きを図ったが、良心の呵責が女将に事情説明に至ったらしい。 一番の被害者はアルバイトの小生であった。 女将曰く 「まあ、丸く収めて頂戴。あなたが犯人で一件落着だし、店を辞めるなら一番都合がいいわ。」
この過去の事象は損害保険業界の査定サイドの事象に似ている。
ちなみにその時の平手打ちで大将の爪が小生のほっぺたに傷をつけて 今でも残っている。 誤解の上の行動であるから大将を恨んではいないし、男気のあるいい 御仁であったと記憶している。 辞めた小生は今でも爪楊枝を詰まらせたアルバイト野郎として大将の記憶に残っているであろう。 ところで、その時の1ヶ月分のアルバイト代は未だにお支払が無い。トホホ。
令和2年10月31日
|