ある日の雨の現場立会…その3
誰が契約者に誤った情報を与えたのかと思いながら、調査中に また小生の携帯電話が鳴る。
『契約者が建物の解体をしていいかあまりにうるさくて、工事をするしないは建物の所有者が決めることです。と答えたからよろしく。 細かい事はよく説明しといて。写真だけはいっぱい撮影して。 ただししっかり調査はして下さい。』
矛盾した指示に弊社の自己責任で契約者に説明した。
「現場調査をしている最中なので、後1時間でいいからユンボを待たせて下さい。お願いします。」
『待てん。こっちはユンボば手配しとっちゃけん。この焼けた工場をこのままは恥ずかしか!』
調査を怠ってしまうと保険金の支払の責任は弊社にだけ来ることを知っていたから、また工場内に入り、調査を続けた。
工場の奥に入って写真撮影していた時である。
「ゴゴゴゴゴー」とキャタピラの音がしてガシャン、ガシャンと解体工事が始まった。 「やめろ~!まだ中に人がおるぞ~!」小生が叫んだが、気付かず解体工事が進む。
工場の裏口から命からがら抜け出して、抜け出しながらも写真撮影をした。
このオヤジ(契約者,工場の経営者)、俺を殺すつもりか …なんて一瞬考えたが、保険会社の指示通りにやっているだけで、多分、小生の事など虫けら同然の扱いであろう。
殺人未遂で110番通報してやろうかなんて考えたが、何分契約者である。忍耐、忍耐。
しかた無いから懐中電灯を点滅させて工場裏口のわずかな敷地である巾1mの犬走からバチバチカメラのフラッシュをたいて人間の存在をアピールした。その後ろは崖である。
ユンボのオペレーターが小生を発見した。
『おい、そんなとこに居るな!はよ出て来い。死ぬつもりか!』 オペが叫ぶ。
重機のエンジンが停止した。
…助かった。 令和3年4月9日
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